自分の中に毒を持て

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本屋さんで見つけた岡本太郎氏の著書「自分の中に毒を持て」。お手頃な値段だったこともあって速攻で購入。そして、すぐに家でざっと読んでみると、期待以上に面白さにとても得した気分になった。まるで子供の頃に駄菓子屋で当たりくじを引いたくらい、自分に酔いしれてしまうほど嬉しかった。しかし、よくよく冷静になって考えてみると、岡本太郎氏の著書に外れなんてものは存在しない。そこには作品と同じように発するエネルギーの強さがあって、芸術家の魂は理屈を超えて感性を触発してくれるパワーの集積だ。あらためて再認識することになる。体調がすぐれていない時は見てはいけないものだと知らされた。

ちなみにこの本にはいくつもの名言がある。どれも素晴らしく、優劣つけ難い。その中で「人間は自分をきつい条件のなかに追い込んだときに、初めて意志の強弱が出てくる。この点を実に多くの人がカン違いしている。たとえば、画家にしても才能があるから絵を描いているんだろうとか、情熱があるから行動できるんだとか人はいうが、そうじゃない。逆だ。何かをやろうと決意するから意志もエネルギーもふき出してくる。何も行動しないでいては意志なんてものありゃしない。自信はない、でもとにかくやってみようと決意する。その一瞬一瞬に賭けて、ひたすらやってみる。それだけでいいんだ。また、それしかないんだ」は、美術家を志す人に必要なものが凝縮されている。

創作はどんな素晴らしい技術やコンセントよりも、その人の人間力で表現されたものの方がいい。つまり具体的に形容しがたいもの、ハッキリとした形のない世界観こそが、作品の重要なスパイスになっていく。いつしか感性を奥深く刺激して、生きていることを堪能できる。そう、子どもが描いた絵と同じように、まっさらで思いっきりよく描いたものは、細かい説明なんてまったく不要なもので、そのまま受け止めて楽しんだらいい。いくえにも及ぶ知性で作品の良さを知っていくより、ズバッとひらめく感性で面白さを感じることが大切になるのだろう。