努力の天才

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近年、美術家になろうを志して活動する人は、すぐにそこそこのレベルまで達しやすい。なぜなら、ネットを通じて豊富な情報を得ることができるし、制作に使用する画材や道具類も進化して利便さが高く、そして、分野を越えた横のつながりによって、的確にアドバイスしてくれる人なども存在し、美術を取り巻くさまざまな環境が整備され続けている。その昔のように、道なき道を切り拓いていったタフさがなくても、美術家になれるルートが開発されて生存者が増えた良い時代になったのだ。

反面、イソップ寓話の「ウサギとカメ」の物語と同じように、先行して有利な展開で油断して寝ている間に、抜かれていくケースをよく目にすることがある。例えば95%近くまで上手くいったのだから、これで大丈夫だろうと安易な考えに流されて、あとほんのわずかな所で努力をやめて妥協してしまうのだ。そもそも美術を一から学ぼうとしないで、要領よく苦労せずに得られたものは、その本質がわからないのかもしれない。あまりにも楽に手にしてしまうと、才能のスイッチがオンにならなくて身に付かないのだろう。

つまり、美術の神様は近道をさせてはくれない。思いっきり遠回りさせることで、どれくらいやる気があるのかを試してくる。自分らしさを求めて創作へ打ち込み、何かの表現が出来上がった時こそ、美術家としての喜びが得られるはず。一生懸命になって創作できるということは、熱心であるということであり、美術に対する態度が誠実であるということだ。それらすべてのパフォーマンスを問い、次元を高めるための創意工夫する姿を問う。「安易に近道を選ばず、一歩一歩、一日一日を懸命、真剣、地道に積み重ねていく。夢を現実に変え、思いを成就させるのは、そういう非凡なる凡人なのです」という格言のように、ひたすら努力して美術になっていこう!