アベレージ

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ノーベル賞受賞者 山中伸弥先生の語録に「野球の打率は3割もあれば大打者ですが、研究は1割でも大成功です。ぼくの研究室を希望する学生には、『実験を繰り返しても、9割は上手くゆかないことにたえられますか』と問うています」がある。

おおー、さすが!とてもシンルで伝わりやすい言葉を引用しながら、なんとも奥深さをイメージさせられる。誰でもそうそう簡単には成功できないことは知っている。言うまでもなく、かなり失敗することは覚悟しているはずだ。ただし、それは学生でも予想できる失敗の範囲だったりする。実は着想はよかったけれど、出来上がるまでのスピードでライバルに負けたり、また、いつの間にか先人たちと同じようなことをやっていたりと、自分が具体的に失敗したこと以外の失敗があるからややこしい。ようやく上手くいったと思っていたのに、その結果はなんと濡れ手で粟だったりする。それだけ研究で成功するということは並々ならぬことなのだ。

ところで、美術家は何割のアベレージを残せば成功と言われるのだろうか。おそらくこの答えは永遠の謎だ。なぜなら創作ための一番のモチベーションは「次回作こそが最高傑作になるのだ!」。安易にこれくらい評価されたらいいと考えていたら、それ以上の世界観を切り拓けなくなる。そのうち似たり寄ったりしたものばかりつくり、飽きられて見向きもされなくなってしまう。だから美術家はいつまでも自分が面白いと感じるものを自由に創作しよう。新しい創作への挑戦には失敗というものがない。あるのはこれでまた成功に一歩近づいただけ。これからもっとよくなってと信じて活動することが大切なのだ。