お墨付き

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「お墨付き」とは室町時代や江戸時代に、将軍や大名から家来(臣下)に与えた領地を、後日の証拠として保障や確認するための文書を指す。これをわかりやすく言うのなら、この世の実力者に能力を認めてもらい、ご褒美としてそれなりの地位やお宝を頂戴することだ。このしきたりは今の時代にもしっかりと残っている。いわゆる企業だったら社員のモチベーションを高めるために、ボーナスや出世などを人参にして使われる。組織で何か目標を達成したいのなら、社員のやる気を効果的に引き出せることができる。

また、美術界も公募展などでこのことは持てはやされている。お墨付きをもらいたい美術家は果敢に出展してしのぎを削り合う。それが出展者同士の切磋琢磨に繋がって、相乗効果も生まれてくるから人気があるのだろう。とにかく正しい目で選んでいくこと。新しい人材を発掘することを目指す。そうではなく縁故やコネでだったら、いずれ後ろ盾がなくなってしまえば、消え去っていく運命にある。自分自身の実力にふさわしくない評価は長続きしないもの。だから無理矢理「お墨付き」をもらっても意味がない。未来にチャンスは何度もある。焦らずに機が熟すまで地道に努力すればいい。自分らしいペースで創作していることが大切なのだ。

ちなみに私はあまり若いうちから評価されない方がいいと思っている。なぜなら、ひとたび新人賞にでも輝いてしまうと、そのことに縛られて自由気ままに創作できなくなるからだ。変なプライドが邪魔して謙虚な気持ちを失いやすい。まだまだ若いから様々なことを学ぶべき時期。自分らしく好きなように感じ、好きなようにつくってみて、それを繰り返しながら創造力を広げていくのだ。若者はお墨付きというものに惑わされず、好奇心や探求心、向上心などをみなぎらせて、どこまでも続く創作の旅を楽しんでいきましょう!