尖がる

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解剖学者 養老孟司氏の言葉に「適当なところで折り合いをつける。これをやるとだめです。特に若い人は丸めるんですよ。そういうものだと思えば、それ以上は考えない。これ、典型的な丸めです。疑問をもつことは体力がいるんです。頭が丈夫でなければいけない」がある。これは誰だって幼少の頃は「なぜだろう?」や「どうしてなのかな?」など、身のまわりのちょっとしたことに疑問を持ち、よくわからないなりに答えを考えていたはずだ。しかし、成長していくに従って、「こんなもんですよね~」と世間一般の考え方に流され、可もなく不可もなしの答えに満足してしまう。いわゆる自分自身を丸めこんで、ただただ普通にしか感じなくなり、素直に不思議だと思わなくなっていくのだ。

私はこの言葉に触れた時に、美術家になれる人とそうでない人は、どうして差が生まれるかについて、具体的に書かれているように思った。つまりそれは「どうすればこの感覚は具現化できるのか?」という自分の不思議さを追求する人と、「こういうものを制作していたら問題はない」という既成の価値観以上のことができない人の差のことだ。そして、素直な不思議だと思い続ける頑丈な頭とは美術に対するスタミナのこと。ひとたびこれは不思議だと感じたら、他の人に馬鹿にされようとも決して挫けず、自分の意思を保つためのエネルギーで、端的に言うと美術へのあくなき情熱のことだ。だから作品への創造を簡単に丸めてはいけない。どこまで感性を尖らせて、鋭い表現力を求めていこう!

■難波瑞穂展 これから私はあなたとともに 2020年9月18日(金)-27日(日) 11:00-18:00 (最終日 17:00まで) お休み 9月22日(火)、23日(水)