イマジネーション

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ギャグ漫画の巨匠 赤塚不二夫氏の言葉に「ひとつの漫画をつくるって、イマジネーションをムチャクチャ消費する」がある。

これはなんて正直な言葉だ。なにしろ読者の数は全国にごまんといる。そんな人たちに期待されて、鮮度の高いギャグで喜ばすには、ネタづくりに手間がかかり、表現に技術力も必要になって、誰でもおいそれとできることはない。なにせ少しでもマンネリズムに陥れば、連載はすぐに打ち切られてしまう世界。そのため、読者が予想できない奇想天外に物語になるように、いつもイマジネーションへの刺激を求めて、多種多様な文化に触れては肥やし続け、1話ごとのギャグのためにすべてのイマジネーションを投じたいたはずだ。

つまり、自分自身を崖っぷちに追い込んでは、必死に取り組んでいたのだろう。おそらく全盛期は週に何本もの連載を抱えて、その締め切りに間に合わせようと、次から次へ必死に新しいギャグをつくっていた。いわゆる火事場の馬鹿力を絞り出すようにして、思いがけない想像力を目覚めさせてやり切ったのだ。危機感が大きければ大きいほど、この力は発揮されやすく、1つのギャグへ執念を感じさせられる。さすがギャグ漫画の巨匠。「これでいいのだ!」と、涼しい顔をしながら、努力の影を微塵も見せなかった。