沈黙

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「愚かなる者も黙するときは知恵ある者と思われる」という名言がある。

その昔、私が若かった頃、たまたま美術雑誌で興味を持った作品展を観るために都会の画廊へ行った時のこと。作者の方に何気に山口から来たと伝えたところ感激されて、ぜひ夕方の懇親会へ誘われたので、そのままノリで参加する。だけど、まだまだ美術のことをよく知らない時代。流行りの話題についていけず、ただ取り残されて浮いてしまう。自分としては恥ずかしくて、すぐに逃げ出したかった。あまりの美術知識の低さに落ち込むだけ。しかし、居合わせた人たちからは評価される。どんなことも真面目に聴くと褒められる。たしかに頭の中はオーバーヒートしていたが、顔は話す人の方を向いて踏ん張っていた。そんなやせ我慢している姿勢が勝手に奥ゆかしく見えたのだ。それとやっぱり知ったかぶりをしないことがよかったのだろう。