努力の天才

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中二病という言葉がある。これは本当の病いではない。思春期にありがちな小生意気な言動や態度を表す俗語。主に中学2年生頃に発症し、背伸びした言動をはじめ、自分の能力を実際より大きく見積もって、輝く未来を想像して夢見心地になることを言う。ほとんどの人は発症してもまったく問題はない。いわゆる世間にもまれているうちに、身の程を知り現実的になることで自然と治癒されていく。
しかし、一部にこじらせる人がいる。いつまでも根拠のない自信のまま、独りよがりを繰り返し、自己満足の人生を歩む人たちだ。ただし、この中にはかなり低い確率で天才が現れる。自分はこの世界の申し子だと信じ、脇目も振らずに突っ走って、そのまま夢を叶えていく。思い上がりをプラスに作用させて、エネルギッシな行動で妄想を現実に変えてしまうのだ。
私は中原中也の人生についての本を読むと、中也は中2病をこじらせて、本物の天才になったように思った。たしかに幼少期から神童と呼ばれて、大人びいたセンスを発揮していたが、それは環境にめぐまれただけのこと。それよりも自分は才能を証明するために、果敢に挑戦し続ける中で感性は鋭くなって、その結果、心情を赤裸々に表現できる力を育んだのだ。つまり、中也は人目に付かない場所で頑張っていた努力の天才。努力によって後天的な才能を伸ばしていったのだろう。