北斎

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今週、Eテレの番組 先人たちの底力 知恵泉(ちえいず)のエピソードは「葛飾北斎 ヒット作を生み出すには」。北斎は6歳で絵を描くことに夢中になり、10代で貸本屋で働くかたわらで、木版画の経験を積みながら独学で絵を勉強し、19歳で歌舞伎役者の錦絵で有名な勝川春章に弟子入り。翌年、錦絵の絵師としてデビューするが、まったく売れず自信喪失する。そこで、北斎は当時として掟破りの他の流派の絵をはじめ、漢画ややまと絵、西洋画の遠近法に至るまで意欲旺盛に学び、新たな画風を模索してみたものの、人々に注目されることはなかった。
そんな北斎はなんと72歳で創作した「富嶽三十六景」が大ヒット。湖に映る富士山をアレンジしたり、空の上から富士山を見下ろしたり、赤い色で塗られた富士山の風景など、現実とは違う意外性のある作風によって、作品の観る人を独自の世界に夢中にさせていった。また、作画を描く時は現場主義を徹底して、細部までのリアルさへのこだわったり、時間を感じるもの画面に含まさせて、観る人の心に臨場感を与えて、作品の中に感情移入させて惹きつけていった。北斎自身が肌で感じたことを描き過ぎないように抑え込み、絶妙なさじ加減で見どころを表現して完成させていった。
始めたはリアルを追究していったのだが、それだけでは売れなかったので、元々の日本にあった表現を取り入れて、試行錯誤の末に独自の世界を確立する。リアルとフィクションを絶妙なバランスで配置させて、観る人の期待を裏切らず伝統的なものを抑えつつも、意表をついて驚かせる表現で期待を裏切っていく。以上のような内容で北斎の作品の成り立ちがよくわかり、これは今でも充分に通じる考え方であるため、美術家へのアドバイスとして参考になる番組だった。