二河白道

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仏教用語にある「二河白道」(にかびゃくどう)。極楽浄土へ往生を願う者が迷いの世界から脱出するための道筋に、怒りの象徴である南の火の川と、貪欲の象徴である北の水の川の間に、4寸、5寸幅の白い道がある。この二つの煩悩の河を上を越えてお浄土へ行くには、百歩ばかりの白い道を通り抜けるしかない。そんな険しい道でも念仏一筋に努めれば、悟りの境地、彼岸に至ることができるという教えだ。

ただし、火と水の交わって生まれた10数センチの道幅は本当に狭いもの。ほんのちょっとでも気が散ってしまえば、河のどちらかに足を滑らせて落ちていく。だからと言って、あまりにも慎重になり過ぎると、とてつもないプレッシャーに襲われて、恐怖のあまり足が震えて動けなくなる。この道を十分に通り抜けられる能力があっても、精神力の弱さに負けてしまうと、そのパフォーマンスは発揮することができない。白い道は人間力を試すためにあるのだ。

ところで、「勝って、勝ちにおごることなく、負けて、負けに屈することなく、安きにありて、油断することなく、危うきにありて、恐れることもなく、ただ、ただ、一筋の道を踏んでゆけ」という名言がある。昨日、それを実行している柔道家の勇姿が眩しかった。勝者としての振る舞いは素晴らしかった。そして「 私の柔道人生は続いていく。 今後も自分を倒す稽古をしていきたい」というインタビューの言葉に、心を震わせてもらった。美しい道を見せていただきありがとうございました!