負けしろ

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「人生2割がちょうどいい。その心は、できることの幅は勝率ではなく、負けられる幅で決まるから。弱者というのは、この負けしろが少ないという人。基本的に負けられない人です」という名言がある。

この言葉は、強者というのは勝ち続けることができる人のことではなく、何度でも負けることができる余力を備えた人のことを意味する。裏を返せば、弱者というのは一度たりとも負けることが許されないこと。失敗したら再起不能という一歩も後にひけない状態で、やらなくてはならない状況の人のこというのだ。

美術家を目指す人はこの負けしろを大切にしなければならない。なぜなら、偉大な先人たちの作品がごまんといるため、作品制作を無駄なく効率よく最短距離を目指せば、先人たちの模倣の域を抜け出せない。どこかで観たことがあるような表現に陥り、ありきたりなものになってしまう。要領よくやったところで独自性の高いものは創り出すことはできない。だから、いろんなことをチャレンジしながら、遠回りをする覚悟を持って、ひとつずつ取り組んでいくこと。自分ならやれるはずだと信じて、失敗しても挫けずにやり続ければいい。急いで勝率を上げても仕方がない。それよりも負けしろを増やして悠然と構える。目先の利益にとらわれず、大きな視点で未来を見つめて、できることの範囲を広げることが大切になるのだ。