Life & Work

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「地元の写真コンクールに応募してみた。『こんなの写真じゃない』って言われた。写真なのに・・・。でも先生は『いい写真だ』って言ってくれた。だから東京のコンクールに出してみた。そしたら賞をもらった。初めてもらった。嬉しかった。どんな写真も自分が楽しんで撮った写真は必ず輝いてる。信じてよかった」というのは、アスピラートで本日まで開催している93歳の写真家 西本喜美子さんの言葉である。

昨日、閉幕直前のこの展覧会に参上する。西本さんは72歳から写真を始め、何事も「うまい・へた」はあるが「いい・わるい」はないという合言葉のもと、「自分流が一番いい」「自分流が一番大切」を座右の銘に、今も自撮りなどで意欲的に創作していく姿に驚愕する。「自分が何をやりたいか、何を伝えたいかが分かっていたら、技術は後からついてくる」という岡本太郎の言葉じゃないけど、技術どころか、圧倒的な情熱で人を魅了するパフォーマンスまでついてきている。

世界にはたくさんの写真家はいるけれど、昭和時代のベタなお笑いコントのクオリティーで、観る人に明るく楽しんでもらうために、泥をかぶって体当たりする写真家は西本さんしかいない。少しも芸術性がなくても、特殊性の高い技術がなくても、なぜか心に響いてくる世界観を創り出している。やはり名は体を表すというが本当だ。喜びに満ちたものと出合った人は美しくなるのだ。これからもその名のとおりに活動して、小さな幸せをこつこつと広げながら、人々にあたたかい心を伝染(うつ)していくだろう。