大学

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『大学』とは、「学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させることを目的とする」という意味である。

先週、美術家 山口功さんに学生時代のことについてお聞きすると、彼にとって大学とは正にそのような存在だったと言われた。なんてたって、幅広い知識や教養を身につけるための一般教育科目では、文化人類学や宗教学、照明デザイン論など、いろんな科目を積極的に履修したため、必要単位数の何倍も修得してしまう。とにかく、どんなことでも新鮮に感じて勉強することが面白い。苦手意識しかなかったのに視点が180度変わってしまった。これまで進学のための受験勉強とは違い、社会で生きるために役立つ学びだと気付いたのだ。

そして、この時の学びが彼の人生を明るくしていく。教科書に載っていることを、ただ覚えることだけが勉強ではない。どういうことなのかを、ものの道理がわかってこそが勉強なのだ。作品は表層的なものばかりを作っても、そこにコンセプトが入ってなければ、無用の長物になっていくだけ。自分らしい作品を制作するためには、基調となる主義主張をハッキリとさせて、鑑賞者たちに伝えなければならない。既成にある価値観や常識に便乗して、何とか理解してもらおうとは思わないで、どうやって独創性のある世界観ができるのかにこだわっていく。つまり、創作によって伝えるという美術の1丁目の1番地に辿り着いた。自分は美術家だと誇りを持った出発点に立つことができたのだ。