心で味わう

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「ほんとうに海を描くには、その場所の生活を熟知するため、同じ所で、毎日、毎時間、眺めつづけなければならない。だから、僕は同じモチーフを4回も6回も繰り返し描き続けている」というのは印象派を代表するフランスの画家クロード・モネの名言である。

自然の美しさとは必ずしも目で見える風景だけではない。自然の美とは五感を通じて感じるもので、視覚の情報に頼り過ぎて表層的ものなってはいけない。つまり、美術とは見えないものを見えるようにすること。自然の中に身を置いて、風を肌で感じてみたり、小川のせせらぎや小鳥たちのさえずり、やさしい花の香りなど、目には映らない音や匂いを感じて表現することが大切になるのだ。

先日訪れた防府市の英雲荘は、1654年に2代目萩藩主 毛利綱広によって建てられた公館。さまざまな変遷をたどって、今は県内に遺る唯一の御茶屋である。そんな由緒正しい所に居ると、目には見えないものが浮かんでくる。歴史的な観点からも、美しいお庭の眺めからも、そして、吉田朱里さんの不思議な作品からも、何かを感じて豊かな気持ちになっていく。やはり美しいものは生きていることを心に訴えてくる。いろんな感性で味わっていく世界なのだろう。