今年2月上旬、第11回やまぐち新進アーティスト大賞展に挑戦したものの、大賞受賞者の圧倒的なクオリティーのある作品の前に後塵を拝する。実は会場へ応募作品を搬入した時に、その作品は先に展示されていて、ひと目見た瞬間に「わあ、すごい！」と、素直に力の差を認めざるを得なかった。いつも仲がいい先輩だし、誰が観ても本当に素敵な作品。だけど、どうしても歯がゆい気持ちがおさまらない。自分のふがいなさを感じるとともに思いっきりへこんでしまったのだ。
その後、彼女のモチベーションはなかなか回復しなかった。自分の未熟さに目がいって、空回りばかりしていく。何をやっても上手くいかない感じ。スランプに陥ってしまい、これでは秋の個展は難しいと覚悟させられた。いわゆる理想に向かい一生懸命に頑張れるため、まだまだ努力が足らないと思い込むタイプ。一時的に視野が狭まって、自分の良さを見失っている。私なりにあれこれアドバイスしたものの、なかなか実を結んではくれなかった。
そんな中で先月の初めに彫刻家の田中米吉先生のアトリエへ一緒に行く。あのスペタクルな雰囲気が漂う空間に行けば、何かを掴むきっかけになるはずだと期待した。その結果は想像以上だった。この世界に上には上がたくさんいる。だから、悩むことはない。自分のつまらなさをすべて受け入れて、細かいことに落ち込まないで今やるべきことに集中していく。ヨシッ、頑張っていくぞ！と、彼女は一気に前向きになっていった。嗚呼、なんて純粋ななんだ。いや、なんて単純なんだ（笑）。やはり、美術家にとって米吉先生のアトリエは究極のパワースポット。エネルギーがチャージされて、個性豊かな作品が出来上がった。
