天然の魅力

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芸術家 パブロ・ピカソの言葉に「子供は誰でも芸術家だ。問題は、大人になっても芸術家でいられるかどうかだ」がある。

いわゆる子どもの発想というものは、いろいろなものが自由に交り合い、世の中の常識にとらわれたりしない。社会性が身についていないため、 計画性のない成り行き任せで、大人から見れば、予想不能でぐちゃぐちゃなもの。しっちゃかめっちゃなものであるけど、だからこそ、既成概念を打ち破って、新しい世界を感じさせてくれる。これまでの理屈や論理ではまだまだ語れないのを、輪郭線でやさしく包み込むことができるのだろう。

ところで、吉田朱里さんが描いた実家のお庭をモチーフにした風景画。ここが一番見渡しがいいからって、仏間の畳の上に陣取ってクレヨンで制作した。するとクレヨンで描くうちに発生する削れカスが周囲に飛び散り、それがいつのまにやら足の裏について、部屋中の畳が鮮やかな色に変えてしまう。本人はまったく悪びれることはない。その後の掃除が大変だったことは言うまでもないが、それでも楽しかったと微笑むから素晴らしい。彼女のこの屈託のなさこそが最大の武器だ。大人になっても失わない不思議な感覚。童心を忘れずに没頭できる天然のエネルギーこそが一番の個性なのだ。