スクラップアンドビルド

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美術を学ぶことのひとつの大きなメリットは、それがあることさえよく知らなかった世界が開かれていくことである。特に若い頃だったら初めて観るものの方が多いから、「こんな面白いものがあったんだ!」と素直に驚いて、自分の世界を大いに広げることができるはず。それまで思い込んでいたことが、良い意味で崩されることによって、この次も新しい魅力のある美術と出合う楽しみに発展していく。つまり、美術と上手く付き合う基本は自分の固定観念を崩し続けること。自らの興味や関心をスクラップアンドビルドすることで豊かな創造力を育むことができるのだ。

ところで、吉田朱里さんの創作人生はいつも新しい美術作品との出合いを求めている。自分を向上させるためにめちゃくちゃ刺激的なものを探していたりする。しかし、実際にそのような作品と出合った時は、レベルの差に愕然として、よく落ち込んでいる。自分の作品へのイズムが壊されたことでガタガタになりやすいのだ。ただし、「どうしよう、どうしよう」と悩んだ末に、「今はこれしかできないから、これでいいのだ!」と、結局のところ上手く開き直っている。自分の良さを信じて個性を尊重し、創作することの本質にたどり着く。本当に不思議な人だ。それがすべて作品の魅力になるから、やはりこれでいいのかもしれない。