正・誤・表

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2年前、「正・誤・表」という展覧会があった。いわゆる正誤表とは、とても不安定で動的なもの。いずれかを『正しい』と『間違っている』と定めたとしても、ちょっとしたことで新しく変わり、複数の版が互いに矛盾したりする。原本から取り紛れてしまえば、それが何に対応していたか、分からなくなることもある。

美術と美術館のありようはこの正誤表と通じ合う。美術には絶対的な作品なんてない。何かを正しいこととすれば、反対側にあるものは間違いとして見立てる。言い換えれば、あるものを肯定し、同時に否定すれば、論理的に辻褄が合わなくなるため、暫定的でもいいから基準が必要になる。それぞれの作品の個性を活かす意味で、バラバラに見えたとしても臨機応変に応じて、その都度、最善になる展覧会にしていくことが大切になるのだ。

ちなみに県美展の審査も同じようなもの。出展作品に優劣なんてものはない。その人なりにベストだったらいい。それだけで挑戦した意味が生まれてくる。公募展は自分自身の力量を計るための手段。速報値の評価にしかならないから一喜一憂しないようにする。つまり、「正・誤・表」という定義に騙されずにやり続けよう。公募展とは矛盾だらけで、明確な答えのないからこそ、それが美術の自由さだと言えるわけだ。いつも自分なりの「正・誤・表」を使い、自分らしい価値観を見つけ出しいこう!