一期一会

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先日、古くからの友人の紹介で都会からUターンされたばかりのお客様宅へ訪問する。事前にお電話した時の印象は、海千山千の街の人中でもまれて、無事に生き抜いてこられただけに、いろんなことに気配りできる感性を感じた。その直感は正解で、実際にお会いしてみると、思ったとおりのやさしい人だった。ひと言で例えるのなら、寅さん映画の帝釈天参道で働くわき役。日本の古き良き懐かしい風景の中で、一本気な性格で寅さんと被るキャラで、ユニークなやり取りをするシーンが目に浮かんでくる。

ご挨拶してから肝心な仕事を済ませて、その後は年齢が近いこともあって、すぐに打ち解けて和やかな雰囲気のまま、ざっくばらんに語り合った。とにかく話題にはこと欠かない。昭和の終わり頃から現代に至るまであれこれと思い浮かぶことを言葉にしていった。そのなかで好きな音楽のことになり、山口出身で知る人ぞ知るカリスマ性のあるミュージシャンのファンだと言われた。私は音楽の造形は深くない。しかし、偶然にも仲の良い美術家が親しいミュージシャンだったので、破片くらいのことしか知らなかったのだが、その破片はファンからすればレアなものだったので思いっきり喜んでもらえた。

やはり、自分の好きなものがあれば、明るく豊かな人生にしてくれる。他の人から見れば石ころにすぎないものも、その人からしてみれば宝石に匹敵するものもある。言いかえれば、興味のない人からすれば大したことがないと思うことも、大好きな人からすれば喉から手が出るほど重要な価値観がある。だからこそ、小さな破片程度の知識を馬鹿にしてはいけない。わずかなことを知っていえば、いざという時に思わぬ力になって、身を助けてくれることだってある。人生に雑事はない。ちょっとしたことの学びを大切にせねばならないのだ。