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「人の行く裏に道あり花の山、いずれを行くも散らぬ間に行け」という千利休の言葉がある。これは花を思いっきり楽しみたいのなら、人のたくさん集まってくる道より、少ない道の方がじっくりと見られて楽しめるはず。そして、表でも裏でもいずれの道へ行くにしても、花が咲いた時期に行かなければ、見逃すから心してかかれという意味である。
つまり、みんながまだ興味を持っていない面白いものを、新鮮で旬なうちに見つけ出して、自分のものにしていく。これまでと少しくらい日常がある場所へ、その人にしか見えない美しい景色へ、たったひとりで勇気を出して進んでいく。ただし、求めすぎてはいけない。無理矢理に何かをやろうとせず、特別なことを探し出そうとはせず、日々の何気ない時間を丁寧に味わってみる。ゆっくりと噛みしめて味わえば、自分が生きていることを実感できるだろう。
ちなみに美術家は「誰もやっていないものを創る」という観念に捉われやすい。そんな呪縛から早く抜け出した方がいい。そもそも私たちは誰ひとりとして同じ個性ではない。自分自身の存在感を必要以上に誇示しなくてもいい。本当の自分で生きていけば、それだけで充実感が生まれてくる。精一杯、自分らしく表現すれば独創性はそこにある。だから、自分自身であることから逃げ出すな!世間一般の人たちの他愛のない言葉にビビるじゃない。美術家は美術に折り合いをつけると人生が楽しくなる。楽観的になんとかなるではなんにも変わらない。これが今日の限界だ納得しながら痕跡を積み重ねて、自分の才能を新しく変化させていこう。