エイプリルフール

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イソップ童話のひとつ「オオカミと少年」とは、村外れの羊飼いの少年がある時、平々凡々の日々に飽き飽きして、「大変だ、オオカミが出た!」と大声で嘘を叫び、驚いた村人たちが駆けつけて大騒ぎになる。これを面白いぞと味をしめた少年は、その後も同じように嘘を繰り返し、そのたびに集まってくる人々の姿を陰で見ては嘲笑っていた。そうしているうちに、ついに本当のオオカミが現れてしまい、結局、誰も助けに来ることもなく、羊が襲われてしまったという物語だ。
この物語の教訓と言えば、自分が話題の中心になりたくて嘘ばかりついていると、いざ本当に一大事が起きた時に誰も信じてくれず、それ相応の報いを受けることになる。つまり、嘘ばかりついていると本当のことを言っても信用してもらえなくなるという教訓である。しかしながら、嘘そをつくことはよくないことだけど、相手の状況や場の流れを深く考えて、ものごとを円滑に進めていくために、時と場合によって多少の嘘は許される。よい結果を得るために使って和ませるのなら大目に見てもいいはずだ。
ところで、今日はエイプリルフールであり、当ギャラリーの開店記念日でもある。これは偶然なのか必然なのかはよくわからないが、私的には1年の中でもっともふさわしい日だと思っている。なぜなら、美術は想像力を楽しむ世界。感情というわかりづらいものを表現していく。創作物を通じて観る人や受けとめる人の感性に刺激し、何かのイメージを浮かばせて感触をもたらせる。既存にある正しい価値観だけで得られない感覚を現実離れした嘘のようなものによって感じさせていく。「嘘から出たまこと」ではないけど、はからずも本物より本物らしく感じて楽しでいくのだ。それ故にエイプリルフールと美術のコンセプトは社会の雰囲気を柔軟にするためにある。よってこの日に開店したのはベストだと言えるのだろう。