初心忘るべからず

いきなり美術が上手くなることはない。やり始めたら我慢の連続になりやすい。エネルギッシュに積極的に頑張っても、すぐに評価されることは稀だ。ちょっとやそっとのことでは認めてもらえない。最初は誰でも手探りで表現力も乏しいため、自分が思うほどには関心を持ってもらえない。それゆえ、派手で目立つことをやろうとしたがる。基本的なことを身に付ける時期なのに、早く功績を挙げようと背伸びしてしまう。無理矢理レベルの高いことに取り組んでは、空回りばかりして時間を浪費していくのだ。
近年、このようなタイプを目にする機会が増えてきた。安直な見方でことを進めようとして、どうにもならないまま深みにはまる。いわゆるスタート地点にいるのだから、基本に忠実な姿勢で丁寧にやっていく。下積みと呼ばれる地道なことを嫌がってはいけない。創作するには未熟だったら未熟なりに、小さな成長を喜びながら創り続けることが大切なのだ。
つまり、美術の才能は年月をかけて磨きかけていく。平々凡々に思えることを馬鹿にせずにやっていく。しっかりとした基礎をつくることで、その上に立って努力すれば、新しい可能性が広がっていく。だからこそ、平凡なことをさりげなくひっそりと積み重ねてみよう。当たり前のこと、ささいなことをおろそかにせず、いつの日にか平凡が非凡になる日まで、いつまでも初心者のつもりで創作していこう。