独立心

「東西の人民、風俗を別にし情意を異にし、数千百年の久しき、おのおのその国土に行なわれたる習慣は、たとい利害の明らかなるものといえども、とみにこれを彼に取りて是これに移すべからず」という学問のすすめの言葉がある。
この意味は、それぞれの国にはそれぞれの風習とか習慣がある。そのためそれぞれが整合性を持って機能して根付いているから、どこかの国の良いものをいきなり持って来て接ぎ木したところで、一見すぐに定着して馴染んだように見えたとしても、そう簡単に上手く本質まで浸透していくことはない。時間をかけて本当にいいということがわかれば、初めて説教的に取り入れて変えていくべきだとした。
当時、人々は日本と西洋の文明の差に圧倒されて、自分たちの在り方を曲げて調子よく合わせていた。しかし、福沢諭吉は日本人として美しい情緒や形を、きちんと身に付けて誇りを持っていたので、一度立ち止まってしっかりと考えてから行動していった。日本としての精神的な独立を大切にしていた。自分を自分以外に支配させている者があまりに多い。次々に新しいものに目が奪われて、精神的な軸を損なってはいけない。それでは身体の中に魂がないものになってしまう。だから、独立心という価値観で対等な関係で、社会と密接につながっていくこと。自分らしい価値基準で互いに交流し合い、知識や意見を交換することで、社会全体が活発になっていくのだろう。