学問のすすめ

福沢諭吉の「学問のすすめ」は学問にとどまらず、人生のいろいろなことに役立ち、人々に正しい知識を与えて、合理的な考え方ができるようになれる教えである。この著書で有名なのは「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らずと言えり」で、さらに「されど今、広くこの人間世界を見渡すに、かしこき人あり、おろかなる人あり、貧しきもあり、富めるもあり、貴人もあり、下人もありて、その有様、雲と泥との相違あるに似たるはなんぞや」と続く。
この言葉は、諭吉が米国留学した際に独立宣言の一節を意訳したものと言われ、この世は生まれた時点で平等だったはずの人間が、いつの間にか大きな差が生まれてくる。それはなぜのか、どこから生じてくるのかを問いかけで、その差は学問を学ぶと学ばざるとによってできるもので、それによって差が生まれる社会は努力した人が報われたのだから、そうあるべき社会は正しいということを意味する。
つまり、やる気のある人間にはチャンスが必ずやってくる。それは学校での学問と言われるものに留まらず、「飯を炊き、風呂を沸かすのも学問」と言い、机の上で勉強すれば賢くなるのではなく、実際に生きていく中で様々なものを身に付けて、社会で役立てる思考の持ち主になることを目標にする。「もっぱら勤むべきは、人間普通日用に近き実学なり」とも言い、知識を売りものにするだけでは不十分で、自分の頭でちゃんと考えて行動できる人になること、その時々に応用力や判断力を活かすことをすすめる言葉なのだろう。