柔軟さ

とかくこの世は住みにくい」とは、人それぞれ価値観も違えば、習慣も考え方も異なるため、いっぺんに多くの人が集まったら、ちょっとした行き違いが自然に起きること。皆々が納得できることや共感することは簡単なことではない。だからと言って、自らの主義主張を変に抑え込んで、周囲に気を使って遠慮ばかりしていたら、自分らしい個性を発揮することは難しい。人の社会はあちらを立てればこちらが立たずだ。そんな世の中だと悟り、粛々とその状況を受け入れ、思わずつぶやいた言葉なのだろう。
ところで、先週より県美で始まった「佐藤健寿展 奇界/世界」。佐藤氏は世界120ヵ国以上に足を運び、さまざまな国や民族、風習、信仰など、あらゆる文化を肯定的に受けとめて、それらの魅力を独自の視点で写している。その被写体は奇天烈な雰囲気が漂うものばかり。しかし、それらはいろんな条件や偶然が重なり出来上がった光景だ。全国チェーンの商業施設が立ち並ぶ、日本の景色より人懐っこいものだったりする。つまり、住みにくさは人を鍛えて文化を生み出す。そこで生きる人たちは柔軟に暮らすから、自分たちにとって最適なものを創り出す力が磨かれていく。