ロックの魂

私が20代半ばだった頃、ブルースをルーツとしたメッセージ性の強い歌を叫ぶザ・ブルーハーツというパンクロックバンドが流行っていた。時はバブル全盛期。一見は華やかで明るく輝ているイメージであるが、実際は弱肉強食という摂理で構築されいた時代であった。強いところと弱いところ、大きいところと小さいところの差がハッキリとしていた。それでも社会全体的にお金が循環していたので、人々は好景気に酔いしれて、高級品を買い漁ったり、土地や株に投資して一攫千金を夢見ていた。

だけど、社会の根底にある弱肉強食は何も変わらないまま。優良企業は縁故採用が多くて、家柄や学閥によって就職先は区別されていた。そんな世の中をこんなもんだと悟って、大多数は大人しく従順に受け入れて生きる。その方が本当に賢明なのは言うまでもない。強いものに巻かれることは、世間を渡っていくための処世術。このことは間違っていないし、肩肘を張るより素直でいい。しかし、それらに反発し、抵抗し、自分たちの理想を創ってやろう!と、意気込むのが若者たちもいる。理不尽なことと戦うのがロマンチシズムで、それが恐れを知らない若さの特権なのだ。とことん反骨の精神を燃やして突き進めばいい。

ブルーハーツの歌には、大きな壁を壊してやりたい若者の気持ちを代弁していた。逆風を浴びてもひるまず、摩擦で生まれた熱気でさらに熱くなって、エネルギッシュで高揚させてくれる言葉に、新しい世界ができることを期待させられ、夢見る野望を思いっきり肯定してくれた。四半世紀前、こんな感じで思い出話のつきないブルーハーツを一緒に歌い合った学生がいた。彼は卒業後に教員になって、結婚して家族に恵まれて、そして、創作も頑張っているから立派なこと。このたびのTシャツ展には彼の高2のお嬢さんが参加。時の流れのひしひしと感じながらも、胸の内に秘めたロックの魂を作品から感じた。父親譲りなのかな?(笑) そのまま若い活力で未来を創造することを期待する。