おにぎりとうどん

何年か前、図書館で借りたスポーツ選手の食事について書かれた著書に、さまざまな食べものを科学的に解明したところ、試合前に消化がよくて身体の代謝を促進する栄養が豊富に含む食べものの中で、おススメの1つとして掲載されていたがおにぎりとうどんだった。

私はこの記述を読んでからしばらく思考停止し、そして、思いっきり吹きだして笑ってしまった。なぜなら、武士の時代の戦いの前に食べるものが、何百年の時を経て、科学的に正しいと証明されたことは素晴らしい。しかし、結局のところ、そのようなメカニズムがわからなくても、人は長い年月の間、そこに合理性があると感じているから、知らず知らずのうちに食べられていたのだ。

つまり、根拠や理由がハッキリとしなくても、生き抜いていくために必要なものを選ぶ力を持っている。誰かに教えてもらわなくたって、何千年も遺伝子を守るために直感という力を持っている。だから、私は真逆の非科学的なことの方が証明されたと言うべきだろう。人の持つ潜在能力は想像以上に大きくて、しょせん科学ごときでは知れたものしかわかるまい。

今週、ネットニュースで見たAIイラストメーカー話題も、このおにぎりとうどんと同じロジックだと思った。たしかに、このソフトを使うと新聞や雑誌の文章など添えて掲載するイラストとしては有効的だ。いわゆる気の利いたフリー素材。万人向けで可もなく不可もなしの着地点に納まるだけ。個性的で独自性のあるを創出する人の直感には勝てない。人の新しい何かを感知する力の方が遥かに上で、観る人をワクワクさせるのは人以外にできない。誰も人であることに自信を持って生きればいいのだ。