人間は人間と触れ合う

昨日、夕方のNHKニュース番組で藤子不二雄(A)氏のお別れの会の模様が流れていた。冒頭、在り日の藤子(A)氏の映像で、「怪物くんとか、忍者ハットリくんとか、こういう不思議なキャラクターが普通の日常生活のなかに入ってきて、活躍する漫画を描いたら面白いかなと、思って描いていた」と語り、さらに「漫画の主人公というのは、だいたいヒーローで強い人間。だけど、僕は弱い人間もヒーローにできるんじゃないのか考えた。人間はそれぞれの個性があるわけで、同じ人が二人といないわけだから面白い」という言葉は、その作品の理念が集約されていると思った。

私が子供の頃は、テレビでアニメ番組を見ることや漫画本を読みふける時間は何よりの楽しみ。四角四面の堅苦しい時代でもあったので、日常を脱出できる空想の世界にどっぷりと浸ってしまう。その中で藤子(A)氏の漫画を見終わった後は、独特の癖の強い余韻が残って悩まされる。とにかく、スッキリしないというのか、もどかしい気持ちになるばかり。今から思えば、それは大人になるための洗礼。まだまだ子供向けだけど、苦い感覚を教わった気がする。夢や希望だけではなく、弱さや絶望を描いていく。人生で大切なものが詰まっていた。

このニュースの最後に「人間は人間と触れ合うことで、どんどん成長していくわけである。もし、人間が人間と触れ合わなかったら、20歳、30歳、40歳になっても成長しないだろう。だからそれを何とか若い読者に伝えたいと思うけど、まあ、どうなんでしょうねえ・・・」と、苦笑いしながらも自信に満ちた藤子(A)氏の表情に、人間というものを深く知り尽くした大人の凄みを感じた。短い時間だったけど、とても有意義で学ぶことばかり。いろんなことを考えさせられる。やっぱり、藤子(A)氏は偉大な漫画家だ。ありがとうございました。合掌