マッチ売りの少女

今の世の中、巷には必要以上の情報が溢れている。既存のマスメディアに加えて、インターネットの普及や技術革新により情報流通は活況を呈する。だけど、これらをシャワーのように浴びていたら、じっくりと一つのことを考える暇なく、次から次に新しい話題に振り回されるだろう。

そして、知らず知らずのうちに消化できなくなり、脳の容量がオーバーして過密状態に陥っていく。だのに、いつも最先端の情報に触れていると自負が生まれてくる。過剰な刺激から脳が活性化し過ぎて、自尊心が抑えられずに暴走気味になって、その場限りの甘美の世界に心奪われていくのだ。

このことはアンデルセンの名作「マッチ売りの少女」と同じようなこと。マッチをすって夢を見ているうちに大事なものを失っていく。今、最善を尽くすことと向き合おうとせず、厳しい現実から目をそらすうちに、袋小路に入り込んでしまった。もっと自分の可能性に関心を持って、何ができるのかを考えてみるべきだ。

そんなことを空想させる作品と出合う。先日のグループ展に、ジュウラクさんが出品した「my room」は、ベットの上でスマホを握り、絵空事の世界に助けを求めるような少女の切なさを感じた。一見は暗くて古風な雰囲気で描かれた絵であるが、よくよく見れば、ギャルの日常にある寂しさが上手く表現されている。繊細な感受性を感じた。