経験

「経験は最良の教師である。ただし授業料が高すぎる」という名言がある。
いわゆる今の社会は知識を身に付ける教育が中心で、知識をたくさん身に付ければ、立派になれると考えている。それも普段の生活で役立つ基本的な知識ではなく、普通の人が知らない知識の方がより価値があるとしている。だから、学校などで知識さえ身に付ければ、いちいち経験を積まなくても、上手く生きられると考えてしまう。知識第一主義の価値観が至る所に蔓延しているのだろう。
しかし、美術の世界は知識だけではやっていくことはできない。ほとんどの知識とは過去のものばかり。新しい世界観を探り出していくには、経験で養った力がものを言ってくる。さまざまな実践で得た体験や技術がなければ、バイタリティのある表現力は創り出すことはできない。つまり、いくら多くの知識を集めても、そこから新しい創造を生み出すことは難しい。言い換えれば、どんな経験でも軽んじることなく、肌で感じたものを試金石にして、独自性を高めることが大切なのだ。