創造

岡本太郎の著書に「こどもの絵はけっしてうまくもなく、きれいでもないにもかかえわらず、なにか微笑ましく、こちらの気持ちを打ってくる。それはこどもが、うまく描いてやろうとか、きれいに描いてみよう、ここちいいものをつくろうなどという意識をもたず、体裁なんて考えないからだ。こどもの素っ裸な心、魂がそのまま出てくるからたのしいのだ」という一説がある。

これは芸術が職人的なうまさを持っていなければ芸術ではない、という考え方に偏りがちな一般人たちに一石を投じたもの。芸術はこうでなければならない、という先入観や思い込みは、しちめんどくさい描法の約束ごとに捉われていくだけ。その結果、瑞々しい感性への衝動が減退していって、作品制作が面白くなくなってやめてしまう。このようなことを憂いて書いたのだ。

だから、この言葉の続きに「なにもこどもに限ることはない。それはとても人間的な要素を含んでいる。われわれにもそれとおなじ心の状態がある。心のなかには、どんなに年をとり苦労してからでも、こどもがいる」としている。つまり、ささやかに自分自身の楽しみとしてやればいい。ただ好きで夢中になって取り組めばいい。良いとか悪いとかなんて気にせずに、つくることの喜びを味わえばいいのだ。