道楽

いわゆる美術家とは、道楽に生きる人でなくてはならない。ただし、これは世間一般で言われる本職を忘れて、好き勝手に遊び呆けて放蕩すること言うのではない。実は道楽という言葉は仏教に由来する。仏道の修行することによって、さまざまな体験を通じて、身心に得られるものの楽しみを表す。しかしながら、その修行に励む禅僧の生きる姿は、悟りのためにすべてを投げ打っているため、いつの間にか世捨て人としての意味が広まっていったのだ。
そんな修行僧と美術家はよく似ていて、たくさんのことを捨てたり、犠牲を払うことが多くある。普通の人が味わえる幸せに背を向けて、ありたい姿を求めて、自らを厳しく律して生きるしかない。つまり、美術家も修行僧も我が道を極めるための行。ひとつひとつの出会いを大切にすることで生きる力が湧いてくる。才能があるかどうかより、その道の上を真っすぐに歩めばいい。だからこそ、決して本筋からはみ出さないように、見栄を張らずに純粋な気持ちで、まっとうしてだけでいいのだ。