応用力

世阿弥が残した名言に「人の心にめづらしきと知る所、すなはち面白き心なり。花と、面白きと、めづらしきと、これ三つは同じ心なり」がある。

この場合の『花』とは、人を惹きつける魅力であり、人の心に意外性を感じさせる手段を指す。『花』と『おもしろさ』と『めずらしさ』は同じようなもの。面白いと思ってもらうためには、珍しいものを見せなければならず、それ故、新しい感覚で観る人を刺激するパフォーマンスが求められる。ずっと舞台に立ち続けるためには、試行錯誤と創意工夫を繰り返し、好奇心を掻き立てていく必要性に迫られてくる。

だからこそ、ひたすら稽古を積み重ねて、美しく磨かれた芸にしていく。奇をてらえばいいわけじゃない。いつも初心者のように謙虚な姿勢で取り組み、しっかりと型を会得して所作や動作の自由度を高める。基本の動きが型によって身に付いていれば、それをさまざまな形でアレンジして使える。固定観念に縛られることなく、柔軟なセンスで表現すればいい。どんな時も応用しながら生きることが大切だという言葉だと思う。