後天的な才能

その昔から美術家になれる人は、生まれつき備わった才能がなければなれないと言われていた。最初から美しく表現できるセンスを持っていて、普通の人とは生まれた時から、歴然とした差があると思われている。しかし、才能があると言われるのは上手くいった人ばかりで、結果が出た人に対してそのように言っているだけだったりする。

いわゆる世間は成功した美術家しか知らないから、どうしても成功者の結果を見て判断する。しかも面白いことに良い結果が出ると、過去の創作活動もプラス査定に変り、ポジティブな見方で評価されていく。端的に言えば、結果から遡って美談をつくることが大好きで、いかにも数々の変遷を経て、素晴らしい才能を開花したと言いたがる。

実際に美術家になれた人は、自らに合う努力している。これなら自分でもできそうな切り口から手探りで試行錯誤を繰り返す。好奇心を羅針盤にしながら、独自性を求めて創育工夫するうちに、表現力が上がって評価されていく。つまり、いつまでも好きな気持ちを見失わないで、自発的に取り組める意思さえあれば、誰だってなれるチャンスがある。その能力を伸ばしていくことに、夢中になって生きればいいのだ。