仮説

昨日の午後、どうしても狩野芳崖展が観たくなって下関市立美術館へ参上する。実は数年前のある展覧会で芳崖の作品を観た時に、オンラインゲームなどに登場するキャラクターに似ているように思った。それは明治時代にこれまでにない斬新な水墨画を追い求めたことで、マンガのような輪郭線や背景で二次元的な表現になっていたからだ。

それ故、代表作の「悲母観音」もイラストのように観えてしまう。モチーフの観音様と赤ん坊は深いコンセプチュアルではなく、人は生まれてすぐに観音様が救いの手を差し伸べるくださるという、観たまんまに読み解いた方が腑に落ちる。つまり、画壇による作品の価値基準にギャップを感じ、身近なものを題材に表現したポップアートではないだろうか。

ちなみに会場に「人生各自独立の宗教なかるべからず。美術家の宗教は美術宗あり。復(ま)た何ぞ他に之を求めんや」という芳崖の言葉があった。この言葉を私なりに解釈すれば、絵に描かれた赤ん坊は芳崖で、美術家は観音様の元でひたすら制作するのみだと言いたいのかもしれない。