変化するもの

中原中也の芸術論覚え書に「芸術を衰褪させるものは固定観念である。云ってみれば人が皆芸術家にならなかったということは、大概の人は何等かの固定観念を生の当初に持つたからである。固定観念が条件反射的にあるうちはまだよいが無条件反射とまでなるや芸術は枯渇する」という文章がある。

いわゆる美術家とは、いつも新しい価値観にこだわり、既存の美にはないものを求めて、自分なりに創意工夫をして作品制作に取り組む職業だ。それまでに誰も美しいと思わなかったものを、美しいと感じさせるデザインで練り上げていく。要するにいろんなことを試しながら変化を続けること。自らの創作に異彩を取り込むことである。

だからこそ、固定観念に囚われてはいけない。こうでなければとこり固まって、他人の意見や周囲の状況を無視してしまうと、殻の中に閉じこもることになるだろう。ただし、奇をてらえばいいわけじゃない。珍しいことばかりすれば、すぐに珍しくなくなる。古いものの視点を変えるだけで、新しくなりうることを活かすことが大切なのだ。