噛み砕く

新井白石が残した「話は相手に伝わることで意味のあるものになる。難しい専門用語を使用せずに説明せよ。聞き手が理解できないので話し手のレベルが低いからである」という名言がある。

私は美術ついて語り合う時にいつも心掛けているのは、専門性の高い用語をできるだけ使わず、感性をわかりやすい言葉で刺激して、なんとなくイメージが共有し合えることを目指す。なぜなら、専門用語をわざわざ使って語ろうとする人は、自分が知っていることを自慢したいタイプが多く、自己満足以外の何ものでもないと思っているからだ。

ただし、専門用語には水戸黄門の印籠のような効果がある。本当は理解していない人でも、その通りだと納得させてしまう迫力がある。時間がない時に本質を伝えるには、やはり欠かすことはできない。だから、その時々に応じて使い分けることも大切になってくる。どちらにしも自分が伝えたいことを自分がわかっていなければならないだろう。