愚直

岡本太郎の著書に「格好だけ、世間にうまく売り込んだだけの一流を相手にしても意味はない。たとえマスコミに知られない無名の人でも、自分を貫いて生きている人がいたら、そういう人を見つけて付き合うことだ」という名言がある。

先日閉幕した県美展には、あらかじめ美術館へ応募作品のプランを申請して承認されれば、作品の規格や素材、展示方法はどのようにも自由にしていいという特色がある。正にどんな風にでも自由に表現するために作り出されたルールだ。しかし、このことを履き違えて県美展へ入るために、それまでとは異なったインパクトを重視した一時的な作品を制作する人がいる。

これでは本物にはなれない。審査員の目を気にすれば及び腰になって、自分らしさを追究できなくなる。例え大賞を受賞したとしても、表の華やかさとは裏腹に、ほとんど中身がない。いずれメッキが剥げる日を怯えるだけ。それ故、全くぶれることなく絵と向き合い大賞に輝いた井岡義朋さんは素晴らしい。真正面からぶつかっていった。やっぱり愚直さは最大の武器。どこまでも貫いて生きる姿に敬服する。