視点論点

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ちょうど1ヶ月前より県立美術館で開催中の「岸田劉生展」。私は劉生の作品を初めてまとめて観る機会にめぐまれる。そこで本展覧会では思いっきり作品を脳裏に焼き付け、しっかりと学ぼうと意欲満々に入館した。すると展示会場の設えが工夫されていることが目に入る。劉生の言葉の一部を切り取って、これに気付いた鑑賞者が作品に興味を持つようにしている。まるで少ない文字数で何かを伝えようとするなんて俳句や短歌みたいだ。やはり令和時代だからこそ用いられる手法なのかな?そう言えば、作品の前に会った解説文も的確な長さで、観賞のヒントとして読むには絶妙で、基礎知識が少ない人でも楽しめる構成だと思った。

そんなこんなことを考えながら展示室を歩いていると、「冬枯れの道路(原宿附近写生 1916年)の作品に辿り着く。私はこの作品を観た瞬間、画面に描かれた赤土が目に飛び込んできた。おおー、これが教科書で習った関東ローム層なのだ。私の子供の頃から東京の都心部は大都会で、コンクリートに囲まれた街というイメージしかなかったから、とても新鮮に感じてハートをスマッシュされた。おそらく当時の記録が写真や映像で残っていても白黒しかないはず。そのように考えれば、豊かな色彩で描かれたこの作品は103年前の雰囲気を味あわせてもらえる貴重なもの。ほんの一瞬だけタイムマシーンに乗ったような気分になった。やはり想像力って心を愉快にしてくれる。こんな感想を言ったら麗子には笑われるかもしれないけど、こうやって鑑賞するのが私の個性だから、これからもこんな風に楽しもうと思っている。

■没後90年記念 岸田劉生展 2019年11月2日(土)~12月22日(日) 9:00-17:00(入館は閉館30分前まで) 休館 月曜日(12月2日は開館)) 観覧料 一般1300(1100)円、シニア・学生1100(900)円 ※シニアは70歳以上。( )内は前売・20名以上の団体料金。18歳以下、高等学校、中等教育学校、特別支援学校の方は無料