親心

f:id:gallerynakano:20191212232023j:plain

少し前にも取り上げて書き綴ったNHK連続テレビ小説 スカーレット。焼きものの里・信楽でヒロインが陶芸家を目指して様々な出来事を乗り越えて奮闘する物語。ここまで放映されたもので、個人的に感想を言うとしたら、陶芸家及び美術家など、創作で生きたい人は見るべきだと思っている。なぜなら目に見えずらい美術で生きる人の葛藤が、変に誇張されることなく等身大の姿で描かれているからだ。昨日も駆け落ちをしてまで結婚したヒロインの父親が、もっと幸せな人生になれると思っていたのに、実際は厳しい現実の前に屈していることを赤裸々に語る。そして、ヒロインが恋心を持つ陶芸家志望の男に、夢を持たずに地道に製陶所で働くことを告げて、この日のドラマは終わってしまった。なんとも切ないシーン。父親は父親として正しいし、予想もしてないことをいきなり言われて、狼狽してしまう男の気持ちもわからなくはない。

ここで父親が言いたかったことは、どんな人でもやりたいことの可能性はある。だからと言って夢を持って頑張った方がいいと賛同できない。つまり、その可能性は統計学上ではゼロでないだけ。実際には奇跡と言うべき数字だったりする。そんなゼロに等しい確率で頑張りたいのなら勝手すればいい。しかし、自分の娘の旦那になるのなら勘弁してくれ。これまでの自分の放蕩ぶりを戒めて、娘の亭主はせめて堅気に生きて欲しいと願う、親心から生まれた愛のある言葉は素晴らしかった。今の時代にこんなことを言う親はほとんどいないだろう。なんとかなるさ根性が蔓延している。たしかにゼロに近い可能性には希望や夢がいっぱい感じられる。出来ないことへの挑戦はスリリングでエキサイティングだ。この日のドラマが終わった後に以上のことや、その他のこともあれこれろ考えさせられた。実にためになるテレビ番組だ。創作の世界の教育テレビとして、これからも楽しんでいこうと思う。