いだてん

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NHK大河ドラマ「いだてん」。日本国の夏季五輪の様々な歴史と初代東京五輪大会を、前半は日本マラソンの父・金栗四三氏、後半は東京五輪招致に尽力した田畑政治氏の2人の主人公にして描いた物語。私は高校時代陸上部だったことと、私の生まれ年に東京五輪が開催されたため、思いっきり見続けて堪能してしまう。視聴率は苦戦したようだけど、私個人としては宮藤官九郎のユーモア溢れた脚本が面白かった。また、登場したタレントたちも適材適所の配役で、喉とおりが良くてよく笑わせてもらえた。特に戦後の復興から五輪開催に至るまで流れは力強く、高度成長という歴史的背景を肌で感じさせられ、ついついテレビの中に引き込まれてしまい、その時代に自分も生きているような錯覚に陥った。嗚呼なんておめでたい奴!いいや、子どもの頃からトリップすることは日常茶飯事に生きてきたのだから当然なこと。いつも踊る阿呆に見る阿呆になって、ハマりにハマってしまう性分が招くのだろう。

ところで、どうしてもベースは歴史であるため、動かせないことが多くあったが、それをシュールな表現や展開で曖昧にしながら、かと言って本質を崩さない演出は素晴らしかった。これはアートと同じだ。全体を貫く基本的な考え方がしっかりしているとわかりやすい。いくつもの伏線を使って言いたかったことを醸し出し、次から次に視聴者の想像力を刺激しては、あの時代の熱気を伝えてきた。それくらい突飛なものを目立たせて、令和になっても変わることのない、ヒューマンパワーを直接的にぶつけてきた。とてつもなく乱暴な面もあったけど、これこそが血の通った人間らしいもの。機械の中に囲まれた社会に生きていると、いつの日か自分も機械だと誤認している人たちに、もっと遺伝子を活性化させて、人が持つ力を信じよというメッセージを感じた。視聴率、支持率、好感度なんて関係ない!最後までアーティスティックな魂が伝わり、満足することができたドラマだった。つまり創作は言いたいことを感じて楽しむことが大切なのだ。