素っ裸

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これまで私が会ったことがある愛するべき美術家は、みんな自然体で自分らしいペースで生きている。あからさまに奇抜なファッションを身にまとい、抽象的でハッキリとしない発言をして、訳のわからんパフォーマンスで煙に巻いたりはしない。本物の個性とは奇異で目立つことではなく、自分のピタリとあったものを地道に磨いて、いぶし銀のように醸し出るオーラのことだ。一見すると一般人よりも地味な雰囲気で、あえてその存在感を消していると言った方がわかりやすい。

つまり、自分には価値観があると信じている。もちろん、自信満々なんておめでたい人はいない。だけど、私には美術の世界で生きるしかないと腹をくくっている。いや、ただ単純に美術以外のことはどうでもよくて興味がないだけ。自分にとって美術は価値のあることだから、創作さえできればいいと堂々としていられるのは、つまらない見栄を張ったり、小さな成功をひからかすようなまねはしないからだ。

先日お会いした写真家の石川直樹さんは輝かしい創作活動をまったく自慢することはなかった。まるで新人作家のように一から自分を理解してもらうために、どういうことをしているのかを手を抜くことなく、具体的な事例を挙げながら噛み砕いて語ってくれた。いわゆる世間では高学歴や凄い実績があれば、それだけで通じると思われがちだがそうではない。美術へ対する愛情が豊富だとか、他人に取るに足らないことでも負けていないという気持ちが大切なのだ。その思いが周囲の人たちを巻き込んで熱くする魅力になる。佐々木範子さんも同じようなことが言える。感心するほど美術一直線だ。簡単にできる人生を願わず、困難と立ち向かう忍耐力がある。常に自分自身を研究する意欲がまばゆく光る。