後天性

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その昔、昭和の作詞家 阿久悠氏の言葉に「無条件の若さのピークは18歳」がある。たしかにこの時代の若者は豊かな感受性で、様々なものに触れてながらいろんな感触を吸収していく。ビビット浮かんでくる直感を信じ、如何にも大変そうなことでも、意欲満々にやってやろうと熱くなれる。まだまだ若くて経験が少ない時期だから、あれこれ悩んで立ち止まらずに、思いっきりよく駆け抜けていけばいい!それらがすべて血となり肉となり骨となる。果敢な挑戦の失敗は、若気の至りとして許されるから、18歳の特権を活かそうという意味なのだろう。

ところで、偶然に出合った本に「流動性知能」と「結晶性知能」について書かれてあった。これは知能が成長するピークは20歳代で、あとは低下すると考えられていたが、最近の研究で知能にはこの2種類があって、それぞれ加齢による変化に違いがあることが判明したという。ちなみに「流動性知能」とは、新しいものを学習したり覚えたりするような、経験の影響を受けることが少ない、生まれながらもっている能力に左右される知能。30歳代にピークに達して60歳頃までは維持されるが、それ以降は急速に低下する。次に「結晶性知能」とは一般的知識や判断力、理解力などで、過去に習得した知識や経験を元にして日常生活の状況に対処する能力。60歳頃まで徐々に上昇し、 その後は緩やかに低下していくが、70歳、80歳になればなだらかに低下するものの、そのレベルは20歳代に近い能力が維待されるという。

私はこれを読んで美術家は「結晶性知能」が鍛えられていると感じた。なぜなら、いくつもなっても何かを学び習得できるから、高齢になっても新しい世界を創造できるからだ。つまり、こうして考えると18歳は先天性から後天性へギアチェンジする時だ。そして、いつまでも努力することさえ忘れなければ、創作は発展していけるはずだ。そんな突拍子ない考え方、妄想することは人生をワクワクさせる。どこまでも若い魂を燃やして馬鹿馬鹿しい発想こそが楽しい。