晴れ舞台

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「大舞台は人を変える、人を作る。潜在能力や潜在意識を残酷ほどに拡大して見せる。ある人は才能に気づき、ある人は気弱を発見して狼狽する。しかし、大舞台は結果に責任を持たない。変えるだけである。甲子園ほど、見事な大舞台を知らない」というのは、阿久悠氏の言葉である。
先日行われた山大生の卒業制作展は、ひさしぶりに県美での開催となった。やはりこの会場での展示になると、学生たちの力の入りようが俄然違ってくる。それは美術館マジックと称するべきなのか、数々の華やかな展覧会が開かれた場所では、なんだかんだ言っても独特の空気が流れている。自然と出展者にプレッシャーを与え続けていく。まだまだ若いからとか、未熟だからだとかを言い訳にしないで、若いとは何にも捉われない自由であって、未熟なことは可能性の塊だという心理を教えてくれる。
とにかく、今できることを精一杯やらねればならぬのプレッシャーは、その人の遺伝子に組み込まれたものを活性化させる。未知のエネルギーに繋がっていって、いきいきとした若い力で個性的になろうとしていく。美術館という、美術に憧れるものにとっての晴れ舞台では、そこに立てるだけで喜びが生まれてくる。知らず知らずのうちに創作意欲が高まって、さまざまなイメージを膨らませていけるのだ。その時にできることをできるように、楽しめることを楽しめるように、マイナス思考を払しょくしてプラスにしていく、美術のためのパワースポットだ。