メッセージ

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近年、私たちの日常には必要以上の情報が溢れている。グローバル化した社会の中で生きているため、世界各地のニュースや話題などがメディアを通じて次々に提供される。一般的な人にそんな情報を鵜呑みする派と聞き流す派のどちらかに属しやすい。

鵜呑みする派とは情報をそのまま信じるタイプ。自分の頭で考えようとはしない。ただ言われるがままに受け入れる。これと似て非なる聞き流す派。重要なものも不要のものも、しばらくすると忘れてしまう。一度は受け入れるけど、すぐに新しいことに心が奪われ、興味が次々に移り変わっていく。自分自身の価値観というフィルターを通して、それらについてよく考えたり理解しようとはしない。どこまでも対岸の火事として位置付けて、その場しのぎでぼんやり過ごすのだ。

昨年12月に開催された県美展で、東広島市在住の美術家 大村洋二朗さんは、デモに巻き込まれた人や難民など、困窮した状況の中で助けを求めている人たちが写った写真を素材として、顔面部分を組み合わせて立体化させた多面化写真9点による組作品「Hello Japan」で大賞を受賞する。海外での紛争や社会問題などを自分のことのように受け止めて、行き場のない感情を、1つ1つ丁寧に紡ぎ合わせ、不気味で生々しい雰囲気が伝わる作品で表現していった。彼独特の世界観でメッセージを醸し出す。なんとも凄い反骨精神の持ち主。どの国の人とも繋がっている現実を知らせたいのだ。うちに秘めた熱い思いが作品より真っすぐに伝わってきた。