芸術論の覚え書

中原中也の芸術論覚え書の中に「芸術というものが、生まれるものであって、こしらえようというものではないということは、如何にも芸術の説明にはなっていないようであるけれど、芸術家である人にはこう聞けば安心のいくことである点に留意してもらいたい」という言葉がある。

そう言われてみるとたしかにそのとおり!美術作品はいろいろな素材を用いて、自分なりに手を加えて、美しく表現しようすることは万人共通のやり方。 この制作手順は一般人でも馴染みがあって、それくらい似たりよったりしたことしかできない。規格外なことばかりにこだわり過ぎると、最終的にはでたらめになることが多い。

だから、ある程度は筋道立てて考えていくことが大切だ。基本的な知識や技術を習得したうえで創作に取り組み、その過程の中でいろんな偶然が重なり合い、それらが作用しあって化学反応をし、これまで観たことないものにたどり着くことができるのだろう。つまり、創造力は偶然によって発生するのだから、ガツガツやったところで生まれてくることはない。努力が実る運にめぐまれるまで、辛抱強く取り組みながら、前向きに生きることしかできないのだ。