温故知新

「過去を広く深く見渡すことができれば、未来も広く深く見渡すことができるであろう」という名言がある。

今年6月くらいから「赤れんが、文化創造の基地へ 」(11月25日(金)よりクリエイティブスペース赤れんがで開催)を企画するために、山口市の近代美術史について調べようと資料を探したところ、そのような便利なものがないことに気づかされる。これは市立美術館がないことや地元に専門の研究者がいないので、当然と言えば当然のことである。それともう一つの理由として、山口市の文化界は人間関係が狭く深いため、大概のことは誰かに尋ねれば知ることができる。要するに、田舎らしく口伝えの文化が蔓延っているから、記録に残そうという発想がなかったのだ。みんなが知っていることだという考え方が根強くて必要性がなかったのだろう。

幸いにも、私の母が様々な資料や新聞記事をスクラップブックなどにまとめていた。また、当時のことがわかる人たちがまだまだお元気なので、そこへ訪ねて行ってはいろんなことを教わった。感謝、感謝である。それにしても口伝えは限界が来ている。年々まつわる人たちは高齢化するから難しくなる。このまま放置し続ければ、近い未来にわからなくなる。山口市の美術文化発展にご尽力されたレジェンドの方々の功績が消滅しかねない。正に風前の灯火。だから、私にできる範囲のことはなんとかしてみたい。せめてもの恩返しに最善を尽くすのみ。みんな先人先輩たちと同じ山口市の上に立っている。その未来を少しでも明るく照らせるように頑張りたいと思う。