今に見ちょれ!

2006年、夏の終わりに県美術展覧会の公開審査会が行われ、福岡県在住の美術家 手嶋大輔君の木彫作品「ヒトリゴト2」が選ばれた。当時の手嶋君は29歳。まだまだ無名というべき存在。これから10年経って、コレクターたちに注目されるなんて、この時に誰が予想できたのだろう。それだけ審査員の眼光は鋭かった。才能豊かな若い作家の潜在能力を見抜いて抜擢する。ただし、その場にはこの審査結果に納得できない画家が参加していた。最終決戦で大賞の座を射止めれない悔しさから、最後の質問コーナーで手を挙げて審査員にこう言い放った。

 「この作品はなんで描かれているのかわかりますか?鉛筆なんですよ!写真のようにリアルに描かれているんですよ」。この出来事は大人気ないという言い方もあるけど、実はこの出来事があったおかげで、自分の創作への姿勢を一から見直す。「今に見ちょれ!」と自らを鼓舞しながら、なんとしても県美展で大賞を獲ってやると、並々ならぬ創作意欲を膨らませた。そして、丸1年間ほどかけて出展作品「徳地に住んで見えてくるもの(色鉛筆で描く・・・)」を創り上げて大賞に輝く。ここから一気に作品評価が高まって、飛ぶ鳥を落とす勢いになっていった。

あれから15年、このたびの県美展で大星君が栄えある大賞を座を射止める。父と同じように、丸1年かけて制作した「ザルの惑星」が高く評価された。本当によかった。本当にうれしい!これで父譲りの創作への熱量は本物なのだと言い切ろう!親の傘の下にいるなんて、もう誰にも言わせない。大星君は大星君にしかできない大星君らしく絵を描いている。2世だからと言って必ずしも成功できる世界ではない。周囲からのプレッシャーもそれなりに大きい。それらに屈することなく、ひたむきにやり続けている。きっと、天国で喜んでいるはず。いや、負けん気が強いから「同じ30歳で獲ったのだから、あと2回を目指して頑張れ!」と、激励したのかも。いずれにしても素晴らしいこと。おめでとうございます!合掌