言葉

昨日のNHK連続テレビ小説「舞い上がれ」で、ヒロインの夫が営む古本屋に馴染みの女子中学生が訪れて、胸のうちを赤裸々に語ったシーンのやりとりが耳に残った。それは中型国語辞典を手に持ちながら「言葉ってさあ~、こんなにいっぱい、いらんくない?中学へ入ってわかったけど、皆に合わせて『やばい』と、『可愛い』と、『キモイ』だけ言っといたら、やっていけるの」というセリフだ。

これは多数意見を前にした時に、暗黙のうちに合わせるしかない。いわゆる同調圧力という存在をほのめかせたのだ。個人的な意見を言うよりも、みんなと同じ意見でなければ、自分がイジメられるかもしれないので、その場の空気に合わせて行動して、立ち回らなければならないことを刹那的に描写したシーンである。なんとも生々しく、リアリティーがあって、思わず唇を嚙みしめてしまった。

こんな重々しい問いにヒロインの夫は「言葉がいっぱいあるのは、自分の気持ちにピッタリくる言葉を見つけるためやで」と言い、将棋の藤井聡太五冠の最終盤の指し手のように、形成をズバッとひっくり返して、本質を端的な言葉で要約したのだった。日本には元来から和の文化があって、他人と衝突することはなるべく避けるようにしている。しかし、周りと同じであれば安全だとすれば、絶えず変化する社会に適応できず、結果的に浮かばれない人生になるだろう。一瞬のうちに様々なことを考えさせられる。一瞬一生の境地を楽しむことができた。