ヒストリー

佐々木範子さんが美術と本格的に取り組んだのは高2の春から。漠然と愉快に過ごしていたある日、そろそろ進路を決めなきゃと初めて真剣に考えてみた。すると、幼い頃から好きな漫画を黙々と描き写していたことを思い出す。ただし、とても不器用だったので、制作に時間がかかったり、ぐじゃぐじゃになったりと、お世辞にもお勧めできないレベル。それでも目指したのはワクワク感が半端じゃない。絵を描く時の高揚感は一番素晴らしいのだ。

ならば、美大へ進学しよう。奇しくも芸大を出たばかりの画家の教室があって、そこで一からデッサンなどを厳しく鍛えてもらう。その甲斐があって志望校に合格。こうして美術の道はスタート。順風満帆な学生生活を満喫していたが、なんと4年生の時に病に伏し、失意のまま卒業したのだった。その後、日常生活は取り戻し、良縁にも恵まれて、子宝にも授かったけど、約15年以上、作品制作ができなかった。

ようやく、絵筆をとり始めたのは30代後半。初心レベルまで能力は鈍っていた。それでも好きなことへの情熱は衰えなかった。まずは我が子を描こう。自ら感動したものをモチーフに、日常の細切れの時間を使っては絵を描いた。執念と言うべき行動をしていく。そんな彼女と偶然出会う。絵は上手いけど、まだまだだった。しかし、それは一瞬のこと。まさかまさかの大連発。この10年間、右肩上がりである。これをひと言でいえば執念。好きなことを貫きたい、純粋な思いをしただけだ。